「なんで絵を描いているの?」
「小さい頃から絵が好きだったの?」
「美大に行ってたの?」
「好きな作家さんは?」
絵を描いていると、よく聞かれる質問です。
でも、私にとっては少し答えるのが難しい質問でした。
小さい頃は外で遊ぶことが好きで、部活はバスケ部。
絵ばかり描いていた子どもではありませんでした。
小学校でイラストコンクールがあれば、楽しみながら描いていたくらい。
日常的に毎日絵を描いていたわけではありません。
正直、その頃は、「絵を描くことが好き」というより、模写をすることが楽しいという感覚でした。
自由に想像して描くより、目の前にあるものをよく見て、そのまま写していく。
そんな時間の方が好きでした。

習字との出会い
そんなある日、学校の習字の授業で書いた字を見て、
「上手だね。」
と、親やクラスメイトの親御さんに声をかけてもらうことがありました。
それをきっかけに、母が「習字を習ってみたら?」と勧めてくれて、私は習字を始めることになりました。
最初は、お手本どおりにきれいに書くことが楽しかったんです。
でも、続けるうちに気づいたのは、私が好きだったのは「お手本どおりに書き写すこと」ではないということでした。
「どうしてこの線になるんだろう。」
そんなことを考えながら、筆を入れる角度を少し変えてみる。
力を抜くタイミングを変えてみる。
ほんの少し体の使い方を変えるだけで、線の表情はまったく違うものになります。
頭で覚えるより、体が覚えていく。
習字を続けていくうちに、その変化をじっくり観察することが楽しくなりました。
「このくらいの角度かな。」
「このくらい力を抜くといいのかな。」
そうやって何度も試しているうちに、気づけば頭で理解するというより、体が少しずつ答えを見つけていく。
その感覚が、好きになっていました。

あとから気づくことがある。
その頃は、もちろんそんなこと言葉にはできませんでした。
「これが好きなんだ。」
そんな自覚もありません。
ただ、なんとなく惹かれる。
なんとなく続けたくなる。
そのくらいの感覚でした。
でも、その『なんとなく』は、少しずつ今の仕事へつながるヒントを教えてくれていたのだと思います。
デザインに興味を持ったこと。
絵を描き続けていること。
ロゴをつくっていること。
振り返ってみると、全部一本につながっています。
あとから振り返って初めて、
「あの頃から私は、これに惹かれていたんだ。」
と気づくこともある。

今だから、言葉にできること。
あの頃は、深く考えず、その時やりたいと思ったことをやっていただけでした。
でも今振り返ると、この感覚を言葉にするなら、「しっくりくる」が一番近い気がしています。
「好きかどうか」は、すぐには分からないことがあります。
でも、何かをしているときに、
「なんか、この感じいいな。」
「自然な気がするな。」
そんなふうに思う瞬間があります。私にとって「描くこと」は、まさにそうでした。
最初から「絵が好き」と思っていたわけではありません。
毎日描いていたわけでもありません。
でも振り返ってみると、
絵を描いたり、字を書いたり、日記を書いたり。
形は違っても、私は何度も「描くこと」に戻ってきていました。
何度も自然と戻ってきてしまうもの。
その時間の自分が、なんだか心地いいと思えるもの。
そんな感覚が、少しずつ自分に馴染んでいく。
私にとって、それが「しっくりくる」という感覚です。

答えを急がなくても大丈夫。
SNSを開けば、
「好きなことを仕事に。」
「自分らしく生きよう。」
そんな言葉がたくさん流れてきます。
だからこそ、
「私は何が好きなんだろう。」
「私らしさって何だろう。」
と、焦ってしまう人もいるのかもしれません。
でも、大丈夫だと思います。最初から分からなくても。
私も、「描くことが好き」という答えを最初から持っていたわけではありませんでした。
ただ、その時々で自然と描いていただけでした。
だから今は、無理に答えを探そうとは思いません。
もし今、
「なんか気になる。」
そんなものがあるなら、その感覚を、少しだけ信じてみてください。いつか振り返ったとき、
「これが私だったんだ。」
そう思える日が来るのかもしれません。
「しっくりくる」を、仕事ではどう大切にしている?
ここまで書いてきた「しっくりくる」という感覚は、私自身のことだけではなく、ロゴをつくるときにも大切にしています。
ロゴデザインでは、いきなり形を考えるのではなく、まずご依頼者さまの言葉を集めるところから始めます。
その人らしさを少しずつ見つけていき、最後に私の感覚と、ご依頼者さまの「しっくりくる」が重なる形を探していく。
実際に私がロゴをつくるとき、形を考える前に何をしているのかを書きました。
▶︎「ロゴデザインを考える前に、私が必ずすること。」を読む
こんな絵を描く人です
私は、ひとつの表現やテーマにこだわらず、宇宙や生き物、訪れた場所や出会った人、そのとき心が動いたことやワクワクしたことから生まれる物語を、いろいろな形で描いています。
この記事で書いた「なんか気になる」「なんか、この感じいいな」という感覚で、今度は私の作品も眺めてみてもらえたら嬉しいです。
「これは何に見えるんだろう」
「なんだか、この絵が気になる」
そんな一枚があるか、自由に見てみてください。
▶︎ nicoの原画・作品を見る
Instagramでは、完成した作品だけでなく、制作している途中の様子や、悩んだり迷ったりしたことも含めて、絵が生まれるまでをそのまま発信しています。
今回の記事のように、あとから気づいたことや、日々の中で心が動いたことも発信しています。
「ちょっと気になる」と思ってくださった方は、Instagramでものぞいてみてください。
▶︎Instagramでnicoの制作を見る
今度は、自分の「しっくりくる」を作品の中で探してみる
📖 絵画の見方に正解はある? 描いた本人さえ、答えはひとつじゃない
「なんか気になる」という感覚は、絵を見るときにも大切にしているものです。
作者の答えを当てるのではなく、
「私は、この絵の何を見ているんだろう?」
と、自分の感覚から絵を見てみる。
そんな私なりの絵の楽しみ方について書いています。
▶︎記事を読む